2019年9月15日 (日)

東宝ミュージカル「リトル・ウィメン〰若草物語」評

オルコットの名作「若草物語」を原作にしたブロードウェーのミュージカルを小山ゆうなの翻訳、小林香の演出・訳詞で上演した。歌唱力のある出演者が揃い、リズミカルで心温まる作品になった。

アメリカ南北戦争に従軍しているため父不在のマーチ家四姉妹メグ(彩乃かなみ)、ジョー(朝夏まなと)、ベス(井上小百合)、エイミー(下村実生)の絆を描く物語だが、本作は作家志望のジョーが男性優位の社会を打破する女性に描かれ、感動的であるだけでなく現代的で痛快である。

朝夏は勝気で竹を割ったような性格のジョーを造形、舞台を牽引している。

ベテランの共演陣も光った。

マーチおばさんとカーク夫人の久野綾希子、ローレンスの村井國夫、お母さまの香寿たつきが存在感を示した。

ローリーに林翔太、ベア教授に宮原浩暢、ジョン・ブルックの川久保拓司。

シアターコクーン。12日所見。

2019年9月 8日 (日)

歌舞伎座・秀山祭九月大歌舞伎評

今月は二代目吉右衛門が祭主となり初代の遺徳を偲ぶ秀山祭。重厚な舞台が続く。

昼の部は「幡随長兵衛」から。

幸四郎が二代目の当たり役、長兵衛に挑む。序幕「村山座舞台」は吉右衛門が出てきたかと思うほど似ている。よく研究している。騒ぎを鎮める侠客の貫禄を感じる。「長兵衛内」「水野邸」も台詞に重みがあり上出来。難をいえば最後の「湯殿」の名台詞になると弱くなるが、好演である。

松緑の水野もいい。先達に比べると軽いが、これはこれで結構。

雀右衛門の長兵衛女房お時、錦之助の唐犬権兵衛。

「お祭り」は梅玉の鳶頭、魁春の芸者で華やかに、しかも落ち着いたにぎわいを醸し出す。

昼の部最後は初代吉右衛門の父・三代目歌六

百回忌追善の「沼津」。

吉右衛門の呉服屋十兵衛、歌六の雲助平作、雀右衛門の平作娘・お米、又五郎の荷物持ち安兵衛と好配役。

吉右衛門は相変わらず若い。歌六は老けが板についてきた。「沼津棒鼻」は荷物を担げないことで笑いを取る。

平作が命を捨てて十兵衛から敵の行き先を聞き出す「千本松原」は葵太夫の語りも加わり、今月一番の感動の場面を作った。

普通ならあり得ない状況を納得させて見せてしまうのが吉右衛門歌舞伎の真骨頂である。

 

夜の部は「寺子屋」から。

吉右衛門が当たり役の松王丸。菊之助が女房千代。幸四郎の武部源蔵、児太郎の女房戸浪。吉右衛門は首実権や戻ってからの泣き笑いなど豪快かつ繊細に演じる。他の若手も神妙に熱演しているが前演目「沼津」ほどには盛り上がらない。吉右衛門と若手に役にこもる圧力の差があるのだろうか。

福助が御台所園生の前。

又五郎の春藤玄蕃が、大きな声を出し、この場面で一番高い地位であることを示している。鷹之資が涎れくり与太郎で健闘。

次の「勧進帳」は交互出演。奇数日は仁左衛門の弁慶、幸四郎の富樫。偶数日は幸四郎の弁慶、錦之助の富樫。奇数日を見た。

仁左衛門は智勇勝れた弁慶。特に智が勝る。

幸四郎の富樫は情がある。少し声を高くした方がいいのではないか。

孝太郎の義経はおおらかさと哀歓が備わり結構。

今月最後は三代目歌六百回忌追善狂言「松浦の太鼓」。

当代歌六が大役松浦侯に挑戦。又五郎の大高源吾、東蔵の宝井其角の好配役で楽しめる義士外伝を作った。

歌六は大名の大きさ茶目っ気などまだ存分には描き出してはいないが、よく健闘している。

米吉のお縫、歌昇の鵜飼左司馬、種之助の江川文太夫、鷹之資の渕部市右衛門。

3日所見。

2019年9月 6日 (金)

新橋演舞場・ミュージカル「ペテン師と詐欺師」評

フランスの避暑地でフレディとローレンスの詐欺師コンビが金持ちの女性の虚栄心につけこんで一儲けしようとするコメディ。

ブロードウェーのヒットミュージカルを福田雄一で演出・上演台本。

歌唱力のある出演者がそろい、ペテン師という大時代的なタイトルが示すように古風なコメディで楽しませる。

ドラマを牽引するのは二人。山田孝之は若さと勢いのあるフレディ。

石丸幹二のローレンスはフレディの師匠的な役回りだが、歳を重ねた男の哀愁が漂う。それは近作「ライムライト」と同様。これが舞台に厚みを加えている。

共演は宮澤エマ(クリスティーン)、保坂知寿(ミュリエル)、大和田美帆(ョリーン)、

岸祐二(アンドレ)。

2日所見。

 

2019年8月20日 (火)

「焦点・稚魚の会・歌舞伎会合同公演

25回稚魚の会・歌舞伎会合同公演が8月15日から5日間、東京・半蔵門の国立劇場小劇場で開かれた。

稚魚の会は国立劇場が実施している伝統芸能伝承者養成研修の歌舞伎俳優コースを修了し歌舞伎俳優に入門した俳優の集まり。歌舞伎会は直接、歌舞伎俳優に入門した俳優の集まり。普段、脇役を勤めることの多い両会の人たちが、この日ばかりは大きな役を勤める公演である。

16日の舞台を見た。

幕開きの「一條大蔵譚」は吉兵衛の大蔵長成、春希の常盤御前。松三の鬼次郎、緑のお京。又紫朗の八剱勘解由に春之助の鳴瀬。流れよく筋が運ぶ。

続き「棒しばり」は松悟の次郎冠者、橋吾の太郎冠者、桂太郎の曽根松兵衛。3人とも狂言らしい台詞になっている。

舞踊「三社祭」はやゑ亮の善玉、音蔵の悪玉。同「関三奴」は音幸の奴音平、貴緑の奴貴平。いずれもキビキビして威勢がいい。

最後は「与話情浮名横櫛」。橋三郎の与三郎、好蝶のお富。桂太郎の番頭藤八。緑の下女およし。貴緑の下男権助。彌風の蝙蝠安。橋吾の和泉屋多左衛門。与三郎は名台詞が響き、お富は仇っぽさがある。安に役の性根が入っている。

どの演目も楽しめる。各俳優の歌舞伎への情熱が感じられる舞台であった。

ここで国立劇場の伝統芸能伝承者養成研修

事業に触れておく。昭和40年代から歌舞伎俳優のほか、歌舞伎の竹本、長唄、能楽、文楽など多くの分野で後進を育成している。

歌舞伎俳優では今年4月1日現在、全俳優304人中、研修修了者は99人で3割以上。中でも立ち回りなどに欠かせない名題下クラスは117人中60人と半数以上を占める。

占有率で見ると義太夫狂言に欠かせない竹本の太夫は何と17人中16人で9割以上。

その頂点にいる3期生竹本葵太夫はこのほど人間国宝に認定された。養成研修修了者では初めてだそうだ。=敬称略

 

2019年8月16日 (金)

八月納涼歌舞伎評

 

八月納涼歌舞伎といえば夏芝居。暑い盛り、大幹部が休んでいる間に若手が大役に挑むというものだが、今年は大看板の玉三郎が出演するなど様変わりになっているようだ。

八月恒例の三部制で、第一部は「先代萩」から。「御殿」で七之助が玉三郎の指導を受け女形の大役・政岡に挑んだ。

栄御前を迎えるあたり貫禄不足を感じるが、全編卒なくこなしている。忠義のために死んだ千松と二人きりで向き合い「でかしゃった」と嘆く件は母親の情があふれる。若手ながら独特の存在感で大役を乗り切った。立女形の道が開けてきたのではないか。

幸四郎がこの場の八汐と次の「床下」の仁木の敵役二役。八汐は予想外にいい。低音がうまく操れるようになったからであろう。無言の仁木も貫禄が付いてきており結構。

七之助の甥の勘太郎が千松、長三郎が鶴千代でかわいさと達者な台詞で受けている。

巳之助が荒獅子男之助で荒事の台詞を無事にこなし、児太郎が沖の井で瑞々しい台詞回し。若手が育っている。

扇雀の栄御前。歌女之丞が道益妻小槙。

重い義太夫物だが、爽快感の残る好舞台になった。

もうひとつの「闇梅百物語」は狸(彌十郎)や河童(種之介)傘(歌昇)、雪女郎(扇雀)ら妖怪変化らが登場する滑稽な物語。幸四郎が読売幸吉実は白狐で出演している。納涼歌舞伎らしい小品。

 

第二部は幸四郎の弥次さん猿之助の喜多さんで恒例になった「東海道中膝栗毛」。一九の原作を杉原邦生が構成。戸部和久が脚本。石川耕士と猿之助が脚本・演出を手掛けている。

過去にはラスベガスや地獄など奇想天外な旅をしたが、4年目の今回は借金取り集団に追われながらのお伊勢参り。本水の立ち回りあり、宙乗りありで、にぎやかにスピーディーに滑稽な旅を続ける。

幸四郎は戸乱武(トランプ?)に、猿之助は風珍(プーチン?)になるなど舞台を走り回る。カマキリなど昆虫の研究で知られる中車が火付け盗賊改め鎌川霧蔵、隼人と新悟が与三郎とお富になり、染五郎と團子が雲助の染松と團市で登場するなど笑いの仕掛けも豊富だ。

 

第三部は「新版雪之丞変化」。土部三斎一味に親と財産を奪われた雪太郎が役者・中村雪之丞となり、敵を討つ。三上於菟吉の原作を日下部太郎が脚本・演出補、玉三郎が演出・補綴した。名場面などの映像と舞台演劇を組み合わせたなど一種の連鎖劇である。今や女形の大御所と言ってもいい玉三郎の旺盛な創作意欲に感心する

その玉三郎は、芸の求道者、そして敵討ちの思いを心に秘めた雪之丞を神妙に演じている。

中車が三斎や狐軒老師、盗賊闇太郎など5役。声に工夫がほしいが健闘している。

七之助の秋空星三郎。やゑ六の秋空鈴虫も好演。

12日、歌舞伎座所見。

 

 

 

2019年8月13日 (火)

高砂会評

歌舞伎俳優・中村梅玉率いる高砂屋一門門弟が8月910の両日、東京・水天宮の日本橋劇場(日本橋公会堂)で初公演、高砂会を開いた。

会を開いたのは梅蔵、梅乃、梅丸、梅秋、梅寿の5人。

幕開き「式三番叟」は梅蔵の翁、梅丸の三番叟の素踊り。「三社祭」は梅秋の悪玉、梅寿の善玉。続き「保名」は梅乃の保名。「子守」は梅丸が子守お梅。それぞれ気を引き締めて踊る。

狂言舞踊「釣女」は梅蔵の醜女、梅秋の太郎冠者、梅寿の大名、梅乃の上臈。

それぞれ台詞もなかなのもので、笑いを取った。

最後は梅玉の司会で各人が挨拶したが、簡単な一言にもかかわらず、大きな役を演じた喜びが伝わり、心和む幕切れであった。

メンバーの多くは普段脇役を勤めているが、このように歌舞伎への情熱を持った人たちが歌舞伎を支えているのだと思う。

高砂会の第二回開催を期待する。

10日正午の部所見。

2019年8月10日 (土)

焦点・日本舞踊・市川會の三代襲名

人気歌舞伎俳優・市川海老蔵の主催する日本舞踊市川流のリサイタル・市川會が8月3日から12日まで東京・渋谷のシアターコクーンで開かれている。

今回は海老蔵の叔母で同流派の総代を勤めてきた市川紅梅が初代市川壽紅に、妹で補佐を勤めてきた・市川ぼたんが四代目市川翠扇に、そして長女・堀越麗禾が四代目市川ぼたんにそれぞれ名を改める。めでたい三代襲名披露の大イベントなのだが、10日連続公演とは異例。日本舞踊の現状から見ると快挙と言っても過言ではない。海老蔵の現在の勢いを示した公演である。

7日正午の公演を拝見したが盛会であった。

「寿式三番叟」は壽紅の翁、翠扇の千歳で荘重に幕を開けた後、海老蔵の三番叟は力強く足を踏む。この人らしい三番叟である。

続いて能楽師を招いて祝言曲「高砂」を舞囃子で聴かせた。高尚を好む九代目市川團十郎を意識したのだろうか。

襲名の「口上」で座頭役の海老蔵は時代風のかしこまった口調で話しを運ぶのだが、壽紅に挨拶を促すときに「おばちゃん、よろしく」と砕け、和ませる。

続いて海老蔵の幼い長男・堀越勸玄の「玉兎」とぼたんの「羽根の禿」のかわいい踊りに場内が沸く。

最後は翠扇が大曲「京鹿子娘道成寺」に挑む。幕切れで「待ちやーがれ」の大音声とともに客席通路を通って海老蔵扮する大館左馬五郎が押し戻しで登場、派手な幕切れを作った。

筆者は5月に出版研究センターから「十二代目市川團十郎の世界」を上梓した。同書で十二代目團十郎は日本舞踊・市川流を熱く語り、また日本舞踊普及に活躍したことを紹介している。

海老蔵は来年5月、父・十二代目の後を継ぎ十三代目を襲名する。今回の市川會を見ていると、父同様、日本舞踊普及発展に貢献してくれるものと思う。=敬称略

(伝統文化新聞にも掲載します)

2019年7月18日 (木)

焦点・歌舞伎鑑賞教室インスタ4300超え

歌舞伎普及のため、1時間ほどの演目を解説付き、しかも安価で見せる国立劇場(東京・半蔵門)の歌舞伎鑑賞教室が、今年も6月、7月の2か月にわたり上演された。

六月は虎之介らの解説「歌舞伎のみかた」のあと「神霊矢口渡」。鴈治郎が渡し守頓兵衛を熱演。壱太郎のお舟、虎之介の新田義峰が瑞々しく、光った。

7月は新悟と玉太郎の解説。芝居は「車引」と「棒しばり」。松緑が松王丸と次郎冠者で、いずれも主役の任を果たした。坂東亀蔵の梅王丸と太郎冠者、新悟の桜丸。松江の時平と曽根松兵衛いずれも若々しい舞台になった。

ところで歌舞伎鑑賞教室は高校生を対象に国立劇場の開場翌年(昭和42年)から始まり、近年は一般にも一部開放し、この7月公演は第96回目となる。昨年で観客動員600万人を超えたという。

歌舞伎普及に貢献しているのは間違いないが、一昨年6月公演からスマホを使った、正確に言えばスマホを使わせて普及を図る戦術を始めている。

芝居では撮影禁止が普通なのだが、解説の時間に撮影を許可しているのだ。7月も、解説者が「1分間だけ写真を撮っていいですよ」と撮影を許可「#歌舞伎みたよ」とネット上への掲載を要請すると、高校生たちは一斉にスマホを取り出し撮影を始めた。

では、このうちどれほど「♯歌舞伎みたよ」がネット上に掲載されているのか。

手がかりは国立劇場ホームページにある。

トップページのアカウントを見ると、インスタグラム件数は7月18日現在で4350とあった。鑑賞教室以外のも多少あるらしいが、一昨年6月以来の掲載数に近いようだ。

この何倍もの友人がこれを見る可能性がある。インスタグラムのほかツイッターでの発信もある。

歌舞伎上演劇場の周辺にいると歌舞伎ブームのようだが「歌舞伎という言葉は聞いたことがある」程度の認識しかない人も多い。ネット上拡散作戦の成功を期待する。=敬称略

(伝統文化新聞にも掲載します)

2019年7月11日 (木)

歌舞伎座七月大歌舞伎評

昼夜で海老蔵が活躍。今年も海老蔵公演の趣。

昼の部は「高時」から。

右團次の北條高時。権力者の横暴、横柄さを熱演している。

次は池田大伍の新歌舞伎「西郷と豚姫」。

いかついイメージの立役、獅童が女形、しかも豚姫とあだ名されるお玉で、優男の錦之助が太い眉の豪放磊落な西郷というから、笑いを誘う芝居になりはしまいかと恐れたがシリアスな好舞台になった。

獅童は容姿に劣等感を持つ女性のいじらしい恋心を丁寧に演じている。3年前「嵐の夜に」で情が出せるようになったが、今回もよく出ている。

錦之助の西郷も豪胆でいい。

さて、これからが夜の部の終わりまで海老蔵奮闘公演。

「素襖落」は海老蔵の太郎冠者。

狂言らしい台詞回しで軽く笑いを取る。ただしこれはまだまだ助走。

獅童の大名某。児太郎の姫御寮。

昼の最後は「外郎売」。

海老蔵の外郎売。お家芸歌舞伎十八番のためか力が入る。長男・堀越勸玄を貴甘坊の役で連れて出る。勸玄が外郎売の早口言葉を数分間もかわいく語る。客席は拍手喝采というより興奮のるつぼだ。

一昨年七月、前月に母を失ったばかりの勸玄が舞台に立った。その時、女性客は勸玄の母になりきり、あるいは祖母になりきっているような異様な雰囲気であった。

今月もまだその雰囲気が続いている。早口言葉を無事に言い終えることが出来るかどうか。幼いわが子、わが孫を心配するような女性客の熱気が充満していた。

梅玉の工藤。魁春の大磯の虎。獅童の小林朝比奈。雀右衛門の化粧坂少将。児太郎の小林妹舞鶴。

夜の部は「星合世十三團 成田千本桜」の通し。

タイプの異なる三立役、知盛・権太・忠信を立派に勤めることは至難の業とされる義太夫狂言「義経千本桜」を織田紘二、石川耕士、川崎哲男、藤間勘十郎が補綴・演出。海老蔵が上記三役を含む十三役を演じ分け、疾走した。

三立役のほか、若衆(小金吾)、親父(弥左衛門)、さらに女形(卿の君)など幅広い役を演じ、宙乗り、早替わり、大立ち回りであっと言わせる。海老蔵の魅力満載の舞台である。

特によかったのは知盛。さっそうとした銀平、知盛の正体を顕してからの勇者ぶり。豪快な入水から天に上る宙乗り。わくわくさせる。

その他の役では、もう少しじっくりやってもらいたいものもあるが、本作はスピードが命だから仕方あるまい。

宙乗りに早替わりというと、かつては猿翁の専売特許のようなものであったが、近年やや影を潜めている。海老蔵はその伝承をも念頭に置いているのであろう。重要な歌舞伎の要素なのだから。

こう書くと海老蔵一人芝居に思われるかもしれないが、そうではない。

ベテラン梅玉が品格のある義経、魁春の典侍の局、左團次が重々しい梶原景時で舞台に安定感を与えている。雀右衛門の静御前、萬次郎の尼妙林、右團次の相模五郎も好演である。

8日所見。

2019年7月 4日 (木)

新橋演舞場七月公演「笑う門には福来たる」評

副題が「女興行師 吉本せい」で、お笑いの大手企業・吉本興業の創業者・吉本せいの半生記。

藤山直美が5年前の初演に続き、せいを演じている。病後初舞台となった昨年の「おもろい女」で天才漫才師・ミスワカナを笑いと影で造形したが、今回は笑いと情で演劇の醍醐味を堪能させた。

せいは成功者だが、夫、娘、息子、恋人に先立たれる。相次ぐ悲しみの中にそれぞれの情を描いていく。

随所に芸達者ぶりを披露するが、建前を語る台詞の末尾で凄みを効かせ、本音を感じさせて笑わせる芸は余人をもって代えがたいものである。

田村亮の道楽の治まらない夫・泰三、林与一の破天荒な桂春団治ら周囲も好演。喜多村緑郎はせいの弟・正之助で冷酷な経営者の一面を演じた。

柔らかく優しい大阪弁で笑いと涙を包んだ舞台であった。そういう大阪弁が次第に失われつつあるような気がする。そうだとすれば、保存の意味で貴重な舞台でもある。

4日所見。

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