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2013年3月 2日 (土)

世田谷パブリックシアター「マクベス」評

<見>魔女の予言と妻の教唆で主君を暗殺して王位に就いた勇将マクベスが、亡霊に怯えながら崩壊していく。シェークスピア戯曲「マクベス」を世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎が、構成・演出した。舞台を日本に引き寄せ、萬斎が狂言師である強みを遺憾なく発揮した作品である。河合祥一郎訳。
 2010年に初演した作品の再演だが、登場人物を絞り込み、5人の出演者でマクベス(萬斎)、マクベス夫人(秋山菜津子)、魔女1(高田恵篤)、魔女2(福士惠二)、魔女3(小林桂太)などを演じる手法は画期的だ。
 役名は原作の通りながら、マクベスの裃・袴など日本的な衣装、萬斎が戦闘場面で見せる鮮やかな日本刀の殺陣、大太鼓や琵琶を使った音響、歌舞伎の消し幕のような道具など、ジャポニズム満載である。
 しかし、見ための面白さを狙うジャポニズムに終わらず、「きれいは汚い」「人生は歩く影法師。哀れな役者だ」などシェ-クスピアの名台詞をふんだんに採り入れ、欲望に振り回される人間の哀しさを1時間半という短い時間の中で凝縮させている。
 演出、演技とも結構なのだが、夫をそそのかすときのマクベス夫人が、常識のある比較的穏やかな領主夫人に見える。実力のある秋山だから、この演技は演出の計算によるものかもしれないが、ここは欲望のために夫を罪に陥れる、女の恐ろしさを強烈に出してほしいところだ。
背景のひとつに蜘蛛の巣が描かれている。黒澤明監督の名画「蜘蛛巣城」を思い出させるが、この映画での夫人、すなわち山田五十鈴演じる鷲津浅茅には、マクベス、すなわち鷲津武時を演じた、かの三船敏郎もたじろぐような凄みがあった。
1日所見。
4日まで。この後、大阪、ソウル、ニューヨークで上演する。

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