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2013年6月11日 (火)

歌舞伎座新開場・杮葺落六月大歌舞伎第三部評

<見>第三部は「鈴ケ森」から。第一部の「鞘当」と同じ南北作品「浮世柄比翼稲妻」の一場面だが、第一部では若手花形が演じたのに対し、こちらは大看板。国を出奔して江戸に下る途中の若衆・白井権八が、襲いかかる雲助どもを見事な剣さばきで蹴散らした。それを見ていた江戸で名高い侠客・幡隋院長兵衛が「お若えの」と呼びとめる名場面だ。幸四郎の長兵衛、梅玉の権八である。
 幸四郎は大物侠客の貫録を見せ、名台詞を悠然と艶のある声で語り、聴かせる。先祖の五代目幸四郎や父・白鸚の名を出す入れ事で楽しませる。梅玉は水もしたたる前髪の若衆になっている。刃を見込む姿は瑞々しい。ベテランにしてこの若さは、驚嘆すべきこと。2人が芸の力で見せた舞台だ。
 今月掉尾を飾るのは歌舞伎十八番「助六」。助六実は曽我五郎が、源家の重宝・友切丸を探すため、夜な夜な吉原で喧嘩をふっかけ、相手に刀を抜かせているという曽我物。2月に急逝した團十郎に代わり、息子の海老蔵が助六を勤めた。幹部俳優が多数出演するにぎやかな祝祭劇だが、幸四郎の口上や三津五郎のアドリブで團十郎を追悼する台詞があり、追善の趣も加わった。
 海老蔵は河東節に乗った花道の出端から姿の美しさと気迫で観客を圧倒する。この俳優の助六は、初めて演じた襲名の平成16年と、水入りまで演じた22年の過去2回見ているが、初演から花道の出は素晴らしかった。将来、「助六」はこの人のものだと思わせた。ただ、その時は本舞台に出ると必死に演じる姿のみが目立った。今回は、一部高音部の台詞が不安定になるものの、本舞台でも充実している。江戸歌舞伎の華を体現している。
 福助が助六の恋人の傾城・揚巻。生酔いの花道は陶然とさせ、悪態は力強い。立女形の風格が備わってきた。
 脇も豪華だ。菊五郎の和事味のある助六兄・白酒売新兵衛、幸四郎の簡潔にして温か味のある口上、吉右衛門の洒脱な、くわんぺら門兵衛、左團次の堂々たる敵役・意休、東蔵の慈愛深い助六母・満江、又五郎の軽妙な朝顔仙平、菊之助の気合の入った福山かつぎ、七之助の揚巻妹分・白玉とそろう。飛び抜けて面白いのは、三津五郎の通人。助六の股をくぐる役で、過去に三津五郎のような主役級でこれを演じたのは勘三郎ぐらいか。それだけに、流行語を採り入れてたっぷり笑わせる。團十郎を偲ぶ台詞もさらりと加えた。役が大きくなったといえよう。
8日所見。
――29日まで上演。

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