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2014年6月 8日 (日)

歌舞伎座・六月大歌舞伎昼の部評

<見>歌舞伎座六月大歌舞伎昼の部は、「春霞歌舞伎草紙」で幕が開く。出雲阿国に時蔵、恋人・名古屋山三に菊之助で華やかな絵巻。亀寿、歌昇、萬太郎、種之輔、隼人の若衆、右近、米吉、廣松の女歌舞伎で若々しさを加えた。
 続く「実盛物語」は、木曽先生義賢の妻・葵御前とその子・義仲を救う平家の武将・実盛に菊五郎。花道の出から生締の似合う立派な裁き役ぶり。物語を持ち前の口跡のよさで聴かせる。時代の貫録と共に世話の柔らかさがあり、舞台は甘露。文句なく一級品。
 実盛と共に葵御前の詮議に来る瀬尾は左團次。敵役から、実は葵を匿った家の幼児・太郎吉の祖父であることを明かすモドリへの移行が手慣れたもの。菊五郎同様、存在感も十分。義太夫に乗る両者、菊五郎の実盛、左團次の瀬能は最高の組み合わせだ。
 九郎助娘・小万に菊之助、葵に梅枝。九郎助が家橘で、女房・小よしは右之助。
 「元禄忠臣蔵・大石最後の一日」が今月一番の好舞台。敵討ちの本懐を遂げ細川家お預かりの身となった大石内蔵助(幸四郎)は、配下の浪士・磯貝十郎左衛門(錦之助)の本心を確かめるため男姿になって邸内に入ってきた許婚・おみの(孝太郎)を十郎左衛門に対面させるが、その日、切腹の命が下る。
真山青果の名作だが、上出来と思ったのは、大石の幸四郎だけでなく、周囲の多くが高水準の演技を見せ、緻密な青果劇を作ったからだ。
 幸四郎は、幕府の沙汰を静かに待つ内蔵助を造形した。「初一念」の台詞が心に響く。優しさを内包しているのも魅力。若い配下の恋に父性愛の如き眼差しを注ぐ。幸四郎内蔵助の武士道に厚みを加えている。
 討ち入りを控えていた十郎左衛門の婿入り願いが、吉良邸探索のための偽りだったか、それとも誠だったのかを確かめるため、小姓姿に変装して潜入したおみのは、愛の誠を問う本編の事実上の主役。孝太郎は、命を賭けて愛を確かめるおみのの熱い想いを舞台いっぱいにぶつけた。激しい演技だが、矩を越えないうまさがあった。
 錦之助も、極限状況下の十郎左衛門を熱演、孝太郎と共に、「偽りを誠に変え」て泣かせる。
 おみのを男装させて邸内に導き入れた堀内伝右衛門の彌十郎も好演である。おみのを潜入させた理由として語るおみのの父・乙女田杢之進の悲話は胸を討つ。彌十郎は、このところ外れがない。
 細川家子息・内記の隼人が、品のある演技で重い舞台に清々しい風を吹き込んだ。
 ほかに、御目付・荒木十左衛門に我當、御使番・久永内記に友右衛門。
 最後は、仁左衛門が昨年十月以来の出演となる清元「お祭り」。鳶頭・松吉をきびきび踊り、粋でいなせなところを披露した。20年前に大病から復帰して踊ったのも本曲。「待ってました」の掛け声通り、うれしい復帰である。
 若い者・正吉に孫の千之助が出演している。延寿太夫の清元も華やか。
3日所見。
――25日まで上演。

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