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2014年6月12日 (木)

明治座「細雪」評

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<見>谷崎潤一郎の同名小説を菊田一夫が脚本化した作品。昭和59年に堀越真潤色で現行バージョンになってからでも地方公演を含めると30回以上も公演を重ねている名作舞台である。水谷幹夫演出。
 第二次世界大戦直前の大阪・船場。江戸時代から続く豪商・蒔岡商店の美しい四姉妹、本家の誇りを持ち続ける長女・鶴子(高橋惠子)、芦屋に分家を構える次女・幸子(賀来千香子)、優柔不断で縁遠い三女・雪子(水野真紀)、現代的でトラブルメーカーの四女・妙子(大和悠河)の哀しい運命をつづる。
 宮廷を思わせるバッハの名曲、全てを包み込むような満開の桜。絢爛豪華な衣装を身にまとった華麗な女優たちが平安絵巻のように雅な滅びの美を浮かび上がらせる。練り上げられた名作舞台の強みを遺憾なく発揮している。
 高橋は長女の威厳と誇りをしっかり表わす。演技陣の芯の役割を果たしている。ただ、いささか厳正で聡明な鶴子に思える。台詞のところどころに、鶴子はしっかりしているようでも、所詮は世間知らずのお嬢様という部分が見える。だとすれば、少々とぼけているところがほしい。そこからチェーホフ戯曲「桜の園」のようなおかしみを内包した哀しみが生まれるのではないか。聡明な鶴子にした方が分かりやすいので、これは見解の分かれるところかもしれないが。
 賀来の幸子は、外から妹たちを温かく見守る、常識派で情の細やかな女性になっている。昭和60年以降、最もいい次女ではないか。
 水野の雪子は、優柔不断さを表す「ふーん」という返事の使い分けが前回より上手くなった。厳しい現実の社会に最も適合しにくそうな雪子が、最も堅実に自己を貫いた皮肉を感じさせる。大和は、旧家の重圧を跳ね返す強さを出して、物語を現代につなげた。
 男優陣では、妙子の最初の恋人・奥畑啓三郎の太川陽介が和事味のあるおかしさを出して、今回も目を引く。鶴子の夫・辰雄に磯部勉、幸子の夫・貞之助に葛山信吾、妙子と結ばれる板蔵に川﨑麻世、雪子と婚約する御牧に橋爪淳。
7日所見。
――27日まで上演。
(写真は「細雪」最終場面)=明治座提供

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