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2014年9月 5日 (金)

秀山祭九月大歌舞伎評

<見>吉右衛門が先代の遺徳を偲んで開く秀山祭。
昼の部は「鬼一法眼三略巻・菊畑」から。兵法虎の巻を手に入れようと平家方・吉岡鬼一法眼(歌六)の館に奴として潜入した虎蔵実は牛若丸(染五郎)と智恵内実は鬼一の弟・吉岡鬼三太(松緑)。鬼一と腹の探り合い。歌六は「咲いたわ、咲いたわ」で鬼一の大物ぶりを見せる。染五郎はきれいな色若衆で、松緑もすっきりした色奴。ただ、義太夫に乗せて様式的に見せる、この時代物には、3人共まだ軽い。皆鶴姫に米吉。
 次の 「法界坊」は、永楽屋の娘・おくみ(芝雀)に横恋慕する生臭坊主の法界坊(吉右衛門)を主人公としたお家物。法界坊を当たり役にしている吉右衛門は「大七座敷」から「三囲土手」まで付け文や落とし穴掘りで愛嬌ふりまき、滑稽な場面を作る。小悪党だが、どこか憎めない法界坊。大喜利「双面」では野分姫の霊と法界坊の霊が合体した怨霊となって見せ場を作る。
 仁左衛門が法界坊を懲らしめる甚三で、上々の捌き役。錦之助がおくみと深い仲の手代・要助、実は重宝・鯉魚の一軸を探す公家の若君・松若。品のある二枚目になっている。
 吉之助が小悪党の番頭・長九郎に起用され、懸命に勤めている。軽妙洒脱な台詞もあり、なかなか難しい役だが、手代敵の名手のいない時だけに、頑張ってほしい。
永楽屋後家・おらくに秀太郎、渡し守・おしづに又五郎、松若の許婚・野分姫に種之助(13日まで)。 
 役者の揃った舞台だが今ひとつテンポが出ないのは、初日から3日目のせいだろう。
 同じ3日目だが、夜の部は3本共、充実している。
 最初の「絵本太功記・尼ケ崎閑居の場」は、吉右衛門の武智(明智)光秀に染五郎の一子・十次郎。魁春の妻・操、東蔵の母・皐月、米吉の嫁・初菊。そして歌六の真柴久吉(羽柴秀吉)、又五郎の佐藤正清(加藤清正)。
 吉右衛門はその存在感で戦国の世の厳しさを舞台の隅々にまで行き渡らせる。謀反を起こした武将の意地と苦悩、初陣の十次郎を思う父性愛を感じさせる。
 染五郎は死を覚悟した若者の哀愁を出し、秀逸。
 東蔵も忠義の道を外した息子に心を痛め、愛する孫を死の戦場に送り出す老女の悲しみが伝わる。
 役者が揃い、葵太夫の迫力ある義太夫に乗った重厚な時代物になった。
 続く舞踊「連獅子」は狂言師右近後の親獅子の精に仁左衛門、狂言師左近後の仔獅子の精に孫の千之助。祖父と孫の組み合わせは珍しい。仁左衛門は風格と慈愛を見せる。千之助はキビキビした踊り、赤獅子になってからの巴も毛がよく回る。感動にめでたさの加わった舞台である。
 間狂言「宗論」の錦之助と又五郎も品のいい笑いを取り好演。
 最後は「御所五郎蔵」。侠客・五郎蔵に染五郎、対立する星影土右衛門に松緑。2人は「仲之町」の出会いで、黙阿弥らしい七五調の名台詞を滑らかに聴かせる。松緑はこのところ台詞がよくなっている。
「甲屋奥座敷」で五郎蔵に愛想尽かしをする傾城・皐月の芝雀もいい。五郎蔵の女房でありながら傾城に身を落とした女の哀しさがある。昼の部は、「菊畑」や「法界坊」で今ひとつだった以上3人が、若々しく、かつ落ち着きのあるいい芝居を見せている。
 秀太郎が出会いの止め女・お松で貫録を示す。皐月の身替りになったため五郎蔵に殺される逢州の高麗蔵も好演である。
3日所見。
――25日まで歌舞伎座で上演。

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