« 歌舞伎座・十月大歌舞伎評 | トップページ | 国立劇場十月歌舞伎評 »

2014年10月12日 (日)

新橋演舞場・十月花形歌舞伎評

<見>「市川猿之助奮闘連続公演」と銘打った公演。連続とは、この後、明治座で奮闘公演を続けるからである。演舞場が商売敵である明治座と連携しているわけで、世の中変われば変わるものだ。
 昼の部の幕開き「俊寛」には、さすがに猿之助は出ず、右近の俊寛。10数年前の「右近の会」の俊寛は役の実年齢に近いとはいえ、いささか初々しすぎたが、地方巡演も経験しており、今回は落ち着きのある俊寛になった。落ち着きのあるというのは、流人仲間の成経(笑三郎)、康頼(弘太郎)、成経と婚約した海女・千鳥(笑也)、敵役の赦免使・瀬尾(猿弥)を自分の役の中にうまく抱え込んでいるからだ。
 千鳥を成経と共に赦免船に乗せるため自ら孤島に残る終盤。「思い切っても凡夫心」で波打ち際に出て、「おーい」と叫びながら上手床の前から下手花道へと走るところは感動させる。そこが盛り上がり過ぎたためか、ラストの巌頭はいささか印象が薄い。
 猿弥は得意の敵役で、瀬尾は本格。男女蔵が捌き役の使者・丹左衛門。近年世話物でいい台詞を聴かせているので、時代物も工夫してほしい。
 猿之助が奮闘するのは、先代猿之助が復活した南北の「金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)」。
  安珍を思うあまり目を泣きつぶした清姫(猿之助)、安珍実は文珠丸頼光(門之助)、将門の妹で頼光と恋仲の七綾姫(米吉)の三角関係、七綾姫に横恋慕する藤原忠文(猿之助)の恋の妄執が怪奇色を織り込みながらテンポよく展開する。
 芸術的で見ごたえあるのは常磐津・長唄掛け合いの「大喜利所作事・双面道成寺」。「道成寺」の格調、「三つ面」の軽妙、「双面」の怪奇を猿之助が1人で踊って見せる。
錦之助の田原藤太、猿弥の寂莫法印。
 夜の部も先代復活の南北作品「獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)」。こちらは、たっぷり5時間かけての通し。丹波与八郎が由留木家の盗まれた家宝と父の敵を追って東海道を京から江戸へ下る冒険活劇。猿之助は与八郎、由留木家の馬之助と調之助、与八郎の義妹・お松、その母・おさん実は猫の怪など18役を早替わり、宙乗りをこなしながら演じきる。海底あり場面あり、大滝の立ち回りあり、スペクタクルである。
 総じて、先代猿之助(猿翁)のカリスマ的魅力にはまだ及ばないが、女形の部分は先代より優れている。奮闘連続公演は順調なスタートを切った。
 右近の赤堀水右衛門、男女蔵の赤堀官太夫、猿弥の野次郎兵衛、弘太郎の喜多八。
4日所見。
――27日まで上演。

« 歌舞伎座・十月大歌舞伎評 | トップページ | 国立劇場十月歌舞伎評 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 新橋演舞場・十月花形歌舞伎評:

« 歌舞伎座・十月大歌舞伎評 | トップページ | 国立劇場十月歌舞伎評 »

無料ブログはココログ