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2014年10月13日 (月)

国立劇場十月歌舞伎評

<見>幸四郎・染五郎父子を中心にした「双蝶々曲輪日記」の通し。
幸四郎演じる大物相撲取り・濡髪長五郎の悲劇に焦点を当てた構成。染五郎の若手相撲取り・放駒長吉、放駒をひいきにする豪商の若旦那・山崎屋与五郎、濡髪の異母兄弟・南与兵衛の三役演じ分けも注目される公演である。
序幕「新清水」。この発端があるので、与五郎と傾城・吾妻(高麗蔵)、笛売りの南与兵衛と後にその女房・お早となる傾城・都(芝雀)の2組の男女の関係がよく分かる。
 染五郎は与五郎と与兵衛を早替わりで見せるが、与五郎は和事がかった大店の若旦那、与兵衛は放蕩ゆえに零落したものの元郷代官の跡取りで、あまり替わり映えがしないのは残念。
 松江が敵役の番頭・権九郎。手代敵が手薄なのでがんばってほしい。錦吾が吾妻に横恋慕する平岡郷左衛門で、手堅く敵役を演じた
 二幕「掘江角力小屋」は、与五郎を支える濡髪と、郷左衛門側に立つ放駒の対立を描く。濡髪は郷左衛門に吾妻から手を引かせるため、わざと放駒に負ける。幸四郎の濡髪は、格下の放駒に郷左衛門が吾妻から手を引くよう丁重に頼むくだりで人物の大きさを見せる。素人相撲の若者である放駒との対比をつける。染五郎の放駒も血気の若者らしく結構。
 三幕「大宝寺町米屋」は、濡髪と放駒が対決する日の出来事。無軌道な放駒が実家の姉・せき(魁春)の仕組んだ芝居で改心、濡髪と義兄弟になる。魁春のせきは温かい情で放駒を包む。
 同「難波芝居裏」は、濡髪が与五郎と吾妻を襲う郷左衛門と仲間の有右衛門(錦弥)を意に反して殺めてしまう。ここは、さしたることはない。
 最後の四幕「八幡の里引窓」は、侍を殺害したため逃走する濡髪が、八幡の里で郷代官の後妻になった母・お幸(東蔵)を尋ねる。この日、お早(元傾城・都=芝雀)を女房にしたその家の息子・与兵衛が名を父親と同じ南方十次兵衛と改め、郷代官に任じられる。濡髪を追う立ち場になったわけだ。
 幸四郎は、逃げるべきか、母の継子・十次兵衛に捕らわれるべきか、覚悟はしていながらも揺れる濡髪の心を骨太に描く。東蔵もうまい。実の息子を逃がして助けたい。一方で、継子に手柄を立てさせなければ継母としての義理が立たない。極限状態の母の苦衷を深い情愛と共に造形する。染五郎の十次兵衛は、濡髪を縛った引窓の縄を切り、月光を入れる。事前に取り決めた通り、夜が明けたから自分の役は終わったと逃がすのだ。せっかく手にした役職を投げ打っても、母の実子を助けようとする心意気が清々しい。染五郎は3役のうち、この十次兵衛と放駒がいい。芝雀のお早も明るくて情も深く、好感が持てる。
 4人は浄瑠璃・東太夫、三味線・宏太郎の義太夫に乗って、義理と人情の光差す好舞台を創った。 
8日所見。
――27日まで上演。
――27日まで上演。

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