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2014年10月31日 (金)

青年座「地の乳房」評

<見>水上勉の同名小説を作者自身が劇化、1984年に劇団青年座創立30周年記念公演として初演された作品。今回は同座60周年記念での上演である。演出は宮田慶子。
 大正、昭和初期の福井県若狭の寒村が舞台。事業に失敗し田畑を失い病に倒れた父・宇助(堀部隆一)の反対を押し切って棺桶作りの角治(小豆畑雅一)と結婚した愛(野々村のん)は、田をはいずり回りながら5人の男の子を育てる。時移り戦後の高度成長期、原発建設で崩壊する家族の姿を見る。貧しくもたくましい愛は、作者の母がモデルという。
 愛の母・しん(増子倭文江)と宇助が妾に産ませた義理の息子・鉱太郎(前田聖太)との道ならぬ恋情、愛憎はよく描けている。愛の姑で盲目のいし(津田真澄)の逸話も土着性がよく出ていい。
 因習と貧困にあえぐ戦前の登場人物たちはいささかリアリティに欠ける部分もあったが、角治の葬儀に集まった息子たちが原発に田畑を売るかどうか議論する昭和45年の場面になると、俄然、演技にリアリティが加わる。原発の危険性を訴える者もいれば、金が欲しいという者もおり、兄弟の絆は切れる。最後に老いた愛が登場、田から乳が出る、田を守れと説く台詞は説得力がある。この場面の迫力で、作品は母恋劇であると同時に強烈な反原発劇になった。30年も前の作品だが、3年前の福島の原発事故を予期していたかのようで、タイムリーな再演である。
 30日所見。
――11月3日まで紀伊国屋ホールで上演。

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