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2014年10月 1日 (水)

焦点・倉田喜弘編「江戸端唄集」出版

  芸能史研究家・倉田喜弘さんの編んだ「江戸端唄集」(岩波文庫)の出版祝賀会が9月29日、東京・神田明神の明神会館で開かれた。亡き妻・根岸登喜子さんが復興に尽力した端唄。ゆかりの端唄根岸流家元・根岸禮さんの主催で、家元や一門が華やかに唄い、祝賀ムードを盛り上げた。
 倉田さんは1988年の日本放送協会(NHK)退職前後から、著書「日本レコード文化史」(岩波現代文庫)、「明治大正の民衆娯楽」(岩波新書)、編著「明治の演芸1~8」(国立劇場)、「日本近代思想体系18芸能」(岩波書店)など20種もの本を出版している。守備範囲は広く、会の来賓が徹底した資料収集を高く評価したが、斯界第一級の在野研究家である。
 新刊は、登喜子夫人の唄本を中心にした端唄百番、「木やりくずし」などの「俗謡十種」、編者が古書店で発掘したという貴重な「端唄源氏物語」と「都々逸百人一首」の古典文芸二題で構成。つい口ずさみたくなる唄が並ぶ。
 編者の注釈が面白い。「お江戸日本橋七つ立ち」で始まり、「こちゃ高輪 夜明の提灯消す」と唄う「お江戸日本橋」では、「○七つ 午前四時ごろ。○高輪 品川駅近辺で日本橋から二里(約八キロ)の地。午前六時ごろの到着で提灯は不要。」と謎を解く。納得である。
 さて、この編者、倉田さんで驚かされるのは、80歳を超えながらも、なお衰えることを知らない旺盛な執筆力である。一昨年「幕末明治見世物事典」(吉川弘文館)、昨年「文楽の歴史」(岩波現代文庫)、そして今年「江戸端唄集」と毎年本を出している。
 会のあいさつで最後に「まだ2、3冊は出したい」と痩身、笑みを浮かべた。かの長寿画家・葛飾北斎にも迫るスーパーマン。近代芸能史の新たな発掘に期待するだけでなく、高齢者の旗手としてもますます活躍してほしい人である。(伝統文化新聞にも掲載します)

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コメント

端唄根岸流・副家元の根岸禮知です。このたびは、出版祝賀会にご出席を賜り、ありがとうございました。この記事をFacebookでご紹介させていただきました。
https://www.facebook.com/hauta.negishi/posts/333334443494311
今後もよろしくお願い申し上げます。

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