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2015年1月20日 (火)

俳優座「桜の園」評

<見>劇団俳優座が創立70年記念公演としてチェーホフの「桜の園」を上演した。湯浅芳子訳、川口啓史演出。
 先祖伝来の屋敷と名園「桜の園」を失う女主人ラネーフスカヤの悲劇と捉えるか、あるいはチェーホフ自ら記した如く喜劇四幕とするか、二つに別れる作品だが、演出は同劇団の大先達・千田是也がかつて演出したように喜劇性を強調した。
 ラネーフスカヤは岩崎加根子。岩崎が昭和63年の俳優座劇場プロデュース公演でこの役を演じた時、筆者は「自堕落な表情の中にも気品を失わない」「デカダンな女性」と評した。歳月を経て、今回のラネーフスカヤは柔らかくて大きい。幼子の溺死、夫運の悪さなど不幸の歴史に泣きながらも、明るさを失わず、かといって浪費癖も治まらない。同情に値するところもあるが、浮世離れした不可思議な存在を軽やかに演じて見せる。
 小笠原良知の演じる兄のガーエフも、インテリぶっているが、足が地に着かない滑稽な男である。
 目を引いたのは、千賀功嗣の演じたロパーヒン。農奴の息子で、商人になり蓄財、抵当に入っている桜の園を持ちこたえる方策をラネーフスカヤに再三教えるが聞き入れられず、ついに自ら園を落札、所有者となる男だ。千賀は、新しい時代、新しい正義の象徴のようにロパーヒンを演じ、もう1人の主役になっている。したがって、サクセス・ストーリーにも思えるのが今回の特徴だ。
 家庭教師シャルロッタの長浜奈津子が歯切れのいい演技を見せ、老僕フィールスの河原崎次郎が存在感を示した。
 ラストで桜の木を伐採する斧の音の中にチェーン・ソーの機械音が混じる。かつての千田演出の舞台を思い出した。
16日所見。
――25日まで俳優座劇場で上演。

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