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2015年9月29日 (火)

ホリプロ「NINAGAWAマクベス」評

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<見>演出者蜷川幸雄の名前を題名に冠した伝説的シェークスピア悲劇が蘇った。東西文化融合の作品。昭和62年9月、ロンドンのナショナル・シアター公演を取材、本場英国で大喝采を浴びているのを見て目頭が熱くなったのを思い出す。小田島雄志訳、妹尾河童美術。甲斐正人音楽。
 背中の曲がった老婆の手で巨大な仏壇の扉が開くと、そこは戦場、死の乱世。シェークスピアを日本の戦国時代に翻案した蜷川ワールドが始まる。低音の梵鐘、声明、高音の清らかなコーラス。ダイナミックな交響楽が入り乱れる。蜷川は視覚のみならず、聴覚にも攻めてくる。
 今回は以前に比べて登場人物が進化した。
 市村正親初役のマクベス。勇将だが、どこにでもいそうな等身大の人物。王位を望める身ではないが、魔女の予言、妻の教唆で、逡巡のうちに王位を簒奪する。等身大の人物故に、王位簒奪の苦悩にリアリティがある。殺した王の亡霊に悩まされる件は予想通りうまい。予想以上なのは「人生は・・影法師」の独白。名台詞をかつてない素晴らしい口跡で語り、人生の無常を吐露する。
 また、田中裕子初役のマクベス夫人も魅力的だ。大名の奥方ではなく、平凡な侍の妻のようだが、魔女の予言に突き動かされ、弱気な夫を主君殺しに駆り立てる件は、当初平凡に見えた夫人だけに却って恐怖である。低く押し殺した声は不気味。すり足のような足の運びは能を思わせる。顔を下向きから上向きに変える動きは文楽の首のそれである。心を乱した夫マクベスの手を引いて奥に入る件には妻の優しさがあり、夢遊病になる件も様式的な動きで美しい。文学座出身ながら映像で地歩を固めた女優だが、熟年となったこれから、舞台に花を咲かせそうである。
 ほかに好演した2人を挙げる。
 1人はマクダフの吉田鋼太郎。妻子の死を聞いての慟哭は、男泣きで見せ場を作った。
 もう1人は歌舞伎の中村京蔵。魔女Ⅰで、歌舞伎の台詞回しを駆使、演出の日本調を盛り上げている。
 28日所見。
――10月3日までシアターコクーンで上演。
(写真は市村正親と田中裕子)=ホリプロ提供

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