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2015年9月16日 (水)

松竹新喜劇新秋公演評

<見>水谷八重子、久本雅美をゲストに迎え、大阪の笑と人情を堪能させる。
昼の部は「先ず健康」で幕が開く。経営不振を隠し見栄を張る桜湯店主万蔵(曾我廼家寛太郎)と廃品回収業の弟仙之助(曾我廼家八十吉)が父松太郎(高田次郎)の扶養を巡り競い合う。父に対する扱いが正反対。兄は贅沢三昧、弟は質素で労働もさせる。この対比で笑を取る。座長渋谷天外やゲストは出演しないが、しっかりした芝居を作っている。かつて颯爽とした役で張り切っていた高田が気の弱い隠居を演じているのは時の流れ。老人ホームのおばあさんたちにもてる件はさすがに慣れたもの。
 「一姫二太郎三かぼちゃ」。田舎の資産家の妻おひさ(水谷八重子)の還暦祝いに都会から長男一郎(天外)、長女安子(久本)らが帰郷する。勉強が苦手のため家に残り親を助けてきた三男三郎(藤山扇治郎)は食事の準備に忙しいが、要領が悪く兄弟からのけものにされる。都会で成功していると語る一郎の自慢話は嘘で、結局三郎が兄を助ける。
 扇治郎が祖父寛美の当たり役に挑戦している。寛美のようにとぼけた味が自然に備わっていないので苦戦しているようだが、熱演ぶりを見ていると胸が熱くなる。兄弟たちに、時々親に会いに来てほしいと頼む件は泣かせる。おひさが1人でいる三郎を慰めにくる場面も泣かせる。ここは水谷の新派の技が生きる。
 曾我廼家文童がおひさの夫甚太郎。飄々として無責任な男はお手のもの。
 昼の最後は昨秋に続いて上演する「お祭り提灯」。祭りの世話役佐助(江口直彌)とお兼(紅壱子)が提灯屋徳兵衛(天外)の店に祭りの寄付金を置き忘れる。その金を狙う金貸し山路屋おぎん(久本)、金を取り戻そうとする徳兵衛やその女房おすみ(井上恵美子)、世話役らが走り回る。それだけの話だが今月、この作品が一番いい。スピード感があり、楽しめる舞台になっている。評価したいのは天外が江戸時代の上方の雰囲気を出していること。久本も因業婆にはなっていないが、存在感で舞台をさらう。扇治郎が丁稚三太郎、小島慶四郎が屑屋仙吉。
 夜の部は「色気噺お伊勢帰り」から。長屋の左官の喜六(寛太郎)と大工の清八〈中川雅夫〉がお伊勢参りから帰ってくるが、伊勢の廓で遊んだ遊女、美人のお紺(井上)と醜いお鹿(久本)が2人を追いかけてきたから大騒ぎ。
 久本が金貸しおぎん以上に大暴れ。井上が、清八に惚れたふりをして夫と組んで金を巻き上げようとする性悪女を好演している。里美羽衣子が喜六女房お安で芸達者なところを見せた。
最後は「愚兄愚弟」 何事にも張り合う兄の本家魚惣惣太郎(天外)と弟の本店魚惣惣二郎(八十吉)はそれぞれの娘の縁談でひと騒動。派手な口げんかで笑わせ、ラストの仲直りで泣かせる。
高田が田舎から出てきた叔父金作、小島がマッサージ店の大河内でいい味を出した。
大ベテランの高田や小島が小さい役に回り、存在感を示す。その一方で中堅の芸がしっかりしてきた。いい展開になっている。
14日所見。
――27日まで新橋演舞場で上演。

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