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2015年12月25日 (金)

焦点・文豪の聴いた音曲

   暮れの19日、東京・国立劇場の小劇場で「谷崎潤一郎没後五十年―文豪の聴いた音曲」という邦楽公演が開かれた。倉迫康史の構成演出で文豪・谷崎の生涯と作品に登場する音曲の関わりをスライド写真、朗読などを交え立体的に紹介する異色の公演であった。
 例えば初期の自伝的小説「異端者の悲しみ」では、作品に登場する清元「北州」を取り上げた。主人公と家族との争いがレコードから流れる「北州」で途絶え、静寂になる。その一節を能楽師・梅若紀彰が朗読したあと、同曲を浄瑠璃・清元梅寿太夫、三味線・清元栄吉     ほかで演奏する。
小説「細雪」では四女・妙子が踊る地歌「雪」。菊原光治の歌・三絃、菊萌文子の胡弓に合わせて地唄舞の山村光がしっとりと同曲を舞う。
 ほかに。随筆「雪」から長唄「秋の色種」。演奏は唄・杵屋勝四郎、三味線・稀音家祐介ほか。小説「春琴抄」から地歌「茶音頭」。菊重精峰の歌・三絃、菊萌文子の箏。そして小説「瘋癲老人日記」からは地歌「残月」。主人公が希望する葬儀での「残月」演奏者、富山清琴の子である当代清琴が歌・三絃を担当した。いずれも工夫された紹介付きである。
 邦楽公演というと、何のあいさつや説明もなく幕が開き、演奏が終わるとそのまま幕が下りるケースが多々ある。これでは初心者には敷居が高い。作家と邦楽を結びつけるこの企画は、平成21年の「永井荷風 音曲散歩」に続く第2弾。国立劇場ならではのぜいたくな邦楽公演であるが、邦楽に興味がなかった人も、こういう公演にくればファンになるかもしれない。

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