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2016年2月 8日 (月)

二月大歌舞伎評

<見>昼の部は吉川英治原作、今井豊茂脚本・演出「新書太閤記」の通し。菊五郎が秀吉若き日の木下藤吉郎。有名な「長短槍試合」や清洲城の「三日普請」をさすがに軽快とはいかないが、陽気に手際よく演じる。「叡山焼討」、本能寺の変を聞き遠征先から引き返す「中国大返し」、信長の跡目を決める「清洲会議」と、機転を利かせて次第に出世する様を面白く見せた。寧子との夫婦愛、部下の掌握の件で、持ち味である情が生きる。大ベテランが新作通し狂言の主役に挑戦することに敬意を表したい。

 吉右衛門が「叡山焼討」で信長をいさめる明智光秀、時代物の重厚な雰囲気が漂う。梅玉の貫禄ある信長に菊之助の信長室濃姫。押し出しのいい濃姫を見ていると、近年立役も多い菊之助だが、今はまだ女形の方が似合うと思う。時蔵の気さくな藤吉郎妻寧子。左團次が重みのある竹中半兵衛。歌六の前田利家、又五郎の柴田勝家。

 夜の部は「源太勘当」から。梅玉の柔らかな二枚目梶原源太、秀太郎の慈愛に満ちた母延寿、錦之助の憎々しく、おかしみもある敵役梶原平次。孝太郎の千鳥。

 次の「籠釣瓶」が今月最も見応えがあった。吉右衛門の佐野次郎左衛門。「見染」で吉原の花魁八ツ橋に腑抜けにされる件が秀逸。男の性がうまく出る。入れあげた八ツ橋に愛想尽かしされて発する、「そでなかろうぜ」の名セリフに無念の思いがこもる。八ツ橋ら多数を殺害する大詰「立花屋二階」は復讐の鬼と化した次郎左衛門に鬼気迫るものがある。次郎左衛門は佐野の裕福な商人だが、「見染」で貧相な田舎者に見える点や名刀の力とはいえ最後は剣豪のように強くなる点に矛盾を感じないわけではないが、吉右衛門の芸の力でそれを吹き飛ばしている。

 菊之助の八ツ橋がいい。苦界に身を沈めながらも、芯の強さを見せる花魁である。それが、愛想尽かしにも生きてくる。昼の濃姫と共に結構。

菊五郎が八ツ橋の愛人繁山栄之丞。昼の藤吉郎の印象が強いせいか、色男の香がやや不足。

又五郎の下男治六が優れている。田舎者の雰囲気に愛嬌があり、「見染」「愛想尽かし」を盛り上げる。

 魁春が情のある立花屋女房おきつ。歌六が立花屋長兵衛。彌十郎も八ツ橋から金を搾り取る権八で憎々しさを出した。  最後は舞踊「小ふじ此兵衛」。時蔵の海女小ふじと松緑の船頭此兵衛が竹本と長唄に乗り、派手で劇的に踊る。 4日所見。 ――26日まで歌舞伎座で上演。

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