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2017年7月10日 (月)

七月大歌舞伎評

<見>獅童の病気休演で海老蔵奮闘公演の形。その海老蔵、前月に最愛の夫人を失い悲嘆の中で幼い長男・堀越勸玄を引き連れ舞台に立った。
昼の部は「矢の根」で開く。右團次の五郎はきびきびした動きに好感が持て、ねばつく台詞も影を潜め、まずまずの十八番になった。笑也の曽我十郎。。
「加賀鳶」は海老蔵が天神の梅吉と竹垣道玄の二役。梅吉は貫禄ある加賀鳶で結構だが、偽盲目の悪徳按摩の道玄は仁になく苦戦。しかし、この意欲はいつか花開こう。
中車や右團次、已之助らが鳶で揃い見せ場を作る。齊入のお兼。
「連獅子」は海老蔵の親獅子、巳之助の仔獅子。毛振りが気になるものの、夫人を失ったばかりの海老蔵、二年前に父・三津五郎が他界した已之助を思うと、平常心で見ていられない何かが脳裏をよぎる。
夜の部は通し狂言「駄右衛門花御所異聞」」。「白浪五人男」の頭目・日本駄右衛門が先行して登場している竹田治蔵の作品を織田紘二、石川耕士、川崎哲男、藤間勘十郎によって補綴・演出し復活させた。
 月本家のお家騒動に端を発し、天下を狙う賊徒の張本、日本駄右衛門が妖術を駆使して大暴れ。ゾンビも登場する痛快娯楽劇である。
海老蔵が駄右衛門、玉島幸兵衛、秋葉大権現の三役で魅力をたっぷり見せるが、最大の見せ場は二幕の幕切れ。海老蔵の大権現と勸玄扮する白狐が駄右衛門を制圧するために飛び立つ宙乗り。かつて、客席を興奮のるつぼと化す現猿翁の素晴らしい宙乗りを何度も見てきたが、それとは全く次元を異にする宙乗りであった。もはやこれは芝居ではない。悲劇の父子を応援しようとする日本中のファンの代表者が劇場に詰めかけ、声援を送っている、としか思えない異様な熱気。女性客の掛け声も多かった。その人たちは、役者にではなく、宙で手を振るわが幼子に声を掛けているのだ。ほかの演劇とは違い、人々の心の中に深く入り込んでいる歌舞伎芝居はこれだと思った。
中車、右團次、已之助ら大勢の共演が舞台を盛り上げたが、児太郎が重要な奴のお才に起用され、期待に応えていたことを記しておく。
4日所見。
――27日まで歌舞伎座で上演。

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