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2017年10月10日 (火)

芸術祭十月大歌舞伎評

<見>昼の部は世界最長と言われるインドの叙事詩「マハーバーラタ」を歌舞伎化した新作「極付印度伝・マハーバーラタ戦記」の通し。破滅的な世界戦争を慈愛で止めようとする迦楼奈と武力で制止しようとする阿龍樹雷王子との対立を軸に青木豪が脚本を書き、宮城聰が演出した。戦の虚しさを説く物語は分かりやすく、スペクタクルで早い展開。「仮名手本忠臣蔵」の「大序」や「三番叟」を思わせる件もある。竹本、長唄やツケなど歌舞伎の要素もふんだんに盛り込まれ、楽しめる舞台だ。
菊之助がシヴァ神と二役で迦楼奈を勤めた。逞しさと苦悩を併せ持つ戦士。近年立役が目立つが、今回初めて骨太の演技を見せた。今月の収穫である。
次ぎに評価するのは七之助の鶴妖朶王女。悪女でありながら純粋な恋に泣く。矢継ぎ早に展開する中でじっくり人物を見せた。菊五郎が仙人久理修那で全体をまとめ、貫禄を示した。
時蔵の汲手姫。鴈治郎の帝釈天。松也の阿龍樹雷王子・梵天。萬次郎の羅陀、團蔵の弗機王。楽善の大黒天。左團次の太陽神。
夜の部は「沓手鳥孤城落月」から。落城寸前の大坂城の淀の方を描いた坪内逍遥の名作。石川耕士演出。今回は原作に戻し裸武者をカット、淀の方と秀頼母子に絞り込んだ。
玉三郎が淀の方に初挑戦。この役を当たり役にしていた歌右衛門のように大芝居にせず、落城の悲運による錯乱、息子秀頼への情愛をリアルに描いた。舞台も暗くし新劇調。淀の方の気位の高さは出ている。
七之助が神妙に秀頼を勤めた。松也の大野修理亮。彦三郎の氏家内膳。萬次郎の正栄尼。
次の「漢人韓文手管始」は唐使饗応を命じられた家の家老十木伝七が恋の遺恨でひどい仕打ちをする大通辞・幸才典蔵を殺める。
鴈治郎は初代以来演じている伝七に初挑戦。和事の柔らか味と芯の通った男の強さも併せ持つぴんとこなをうまく演じている。二枚目ぶりより三枚目の線が強く出ているのはこの人らしい。これに対し芝翫の典蔵も立敵の大きさがあり、面白い芝居を作った。
七之助の傾城高尾。松也の奴光平。
最後の長唄「秋の色種」は玉三郎が梅枝、児太郎を従え、深まりゆく秋の風情をしっとり踊る。
2日所見。
――25日まで歌舞伎座で上演。

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