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2017年11月 9日 (木)

顔見世大歌舞伎評

<見>今月の特徴は、藤十郎、菊五郎、幸四郎、吉右衛門、仁左衛門の大看板5人がそれぞれ若々しい役を勤めていることだ。
順を追ってその出演演目を見る。
昼の部の二番目「奥州安達原」の「環宮明御殿」。吉右衛門の安倍貞任。ニセの桂中納言では公家の気品を漂わせ、見顕してからは武将の大きさを示す。しかし、この演目は前半の雀右衛門が光る。親の意に反し敵方の息子・貞任と結婚したため勘当され、幼い娘を連れ放浪する盲目の芸人・袖萩の哀しみを切々と伝える。陰のある女性がうまい。東蔵が袖萩の母・浜夕。勘当はしたものの、娘への愛は断ち切れない母の情が舞台にあふれる。愁嘆場はこの人間国宝のためにあるようなもの。歌六が夫・直方。このところ様々な老けを手がけているが、東蔵の前ではまだ影は薄い。浄瑠璃は一級品の葵太夫。
次ぎが「雪暮夜入谷畦道」で菊五郎の片岡直次郎、直侍。「そば屋」で、粋な御家人崩れrの雰囲気が甘く漂う。余人をもって代えがたい当たり役だが、いささか貫禄が付きすぎでは。時蔵が三千歳で真っすぐな情を見せる。東蔵はここでは按摩の丈賀を器用に演じる。團蔵の暗闇の丑松。
夜の部に入ると「仮名手本忠臣蔵」の「五・六段目」で仁左衛門の勘平。繊細で瑞々しい色気がいまだに十分香る。線の細さをうまく出し、「鶍の嘴と食い違う」哀れを際立たせる。大看板の中では今月一番いい。ただ上方の人だけに上方の型でも演じてほしい。
秀太郎が一文字屋お才でさすがの存在感。孝太郎のおかる、吉弥のおかや。
「恋飛脚大和往来」の「新口村」は藤十郎の忠兵衛。柔らかさが切なさを呼ぶ。扇雀の梅川が舅に対する細かい情で見せる。歌六が孫右衛門。ここでも老けで健闘しているが、十三代目仁左衛門の枯れた父性愛の優しさが目に残っている者にとっては、まだまだである。
最後は「元禄忠臣蔵」の「大石最後の一日」。幸四郎が重厚かつ理性的な内蔵助。そして、初一念を通す武士道より、偽りを誠の愛に変えさせる、情に優れた内蔵助である。
染五郎が恋をじっと心に納めた磯貝十郎左衛門。児太郎が乙女田娘・おみのを好演している。磯貝の愛を命がけで確かめる姿に感動させられる。彌十郎が堀内伝右衛門。乙女田家の苦境を語る件は聴かせる。ほかに仁左衛門が颯爽とした目付役荒木十左衛門、金太郎が品のある細川内記。役者が揃い今月一番充実した舞台。
ほかに、昼の幕開き「鯉つかみ」。染五郎が志賀之助と鯉の精の二役。本水の大立ち回りで楽しませる。
2日所見。
――25日まで歌舞伎座で上演。

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