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2018年12月11日 (火)

歌舞伎座十二月大歌舞伎評

大看板は玉三郎一人、あとは花形若手の布陣だが、昼夜に充実した芝居が並ぶ。昼の部は松竹新喜劇の当たり狂言を歌舞伎化した「幸助餅」から。

相撲取りに入れあげ身代を失う幸助が発奮して立ち直る上方喜劇である。

松也が幸助。若手の中の芸達者だが、和事の役をうまくこなした。今月の収穫である。

中車が幸助の入れあげた関取・雷(いかずち)。二度目だが、声を低くし関取の貫禄を出している。幸助と対峙する場面は緊迫感を漂わせた。

萬次郎の茶屋の女将お柳、笑三郎の幸助女房おきみもいい味が出て、心温まる芝居になった。

「お染の七役」は壱太郎を大抜擢。油屋娘お染、恋仲の丁稚久松、久松許嫁ぉ光、奥女中竹川、芸者小糸、土手のお六、お染の母貞昌の七役を早変わりで見せる。奮闘している中で、若い娘役のお染、お光、そして若衆の久松は当然ながらまずまずの出来。意外にうまいと思ったのは竹川。奥女中の格式を感じさせた。一方でまだまだなのは悪婆の土手のお六。強請り場に研究の余地あり。

中車の久作、松緑の鬼門の喜兵衛、彦三郎の山家屋清兵衛。

 

夜の部は「阿古屋」から。遊女阿古屋が琴、三味線、胡弓を奏で身の潔白を証明する女形の大役である。今回はこれを当たり役にしている玉三郎が2人の若手梅枝と児太郎に伝承する。3人が日替わりで阿古屋を演じるのだが、若手の出演の日は玉三郎は敵役の岩永で出演するというおまけまで付いている。これは若手にとって相当のプレッシャーになったであろう。

玉三郎と梅枝の阿古屋を拝見したが、玉三郎の場合、箏、三味線、胡弓の演奏は阿古屋の哀しみを表現する演技の中にあった。梅枝も健闘したものの、その域にはまだ距離があった。しかし、幸せなスタートを切ったのではないか。伝承の重みを感じさせる一幕。

彦三郎が秩父庄司重忠。口跡よく、捌き役の素質をのぞかせた。

「あんまと泥棒」はずるがしこいあんま秀の市が忍び込んできた泥棒権太郎をだまし金をせしめる喜劇。

中車が秀の市。三度目ですっかりこの役を手にしている。愛嬌たっぷりに演じることも出来る役だが、強欲な線で通し成功している。

松緑が泥棒の権太郎を好演した。人間味も愛嬌もほどよく出た。

最後は舞踊。玉三郎が阿古屋を勤めるときは梅枝と児太郎で華やかな「二人藤娘」、それ以外は玉三郎の幻想的な「傾城雪吉原」。

――3日,4日所見。

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