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2019年7月11日 (木)

歌舞伎座七月大歌舞伎評

昼夜で海老蔵が活躍。今年も海老蔵公演の趣。

昼の部は「高時」から。

右團次の北條高時。権力者の横暴、横柄さを熱演している。

次は池田大伍の新歌舞伎「西郷と豚姫」。

いかついイメージの立役、獅童が女形、しかも豚姫とあだ名されるお玉で、優男の錦之助が太い眉の豪放磊落な西郷というから、笑いを誘う芝居になりはしまいかと恐れたがシリアスな好舞台になった。

獅童は容姿に劣等感を持つ女性のいじらしい恋心を丁寧に演じている。3年前「嵐の夜に」で情が出せるようになったが、今回もよく出ている。

錦之助の西郷も豪胆でいい。

さて、これからが夜の部の終わりまで海老蔵奮闘公演。

「素襖落」は海老蔵の太郎冠者。

狂言らしい台詞回しで軽く笑いを取る。ただしこれはまだまだ助走。

獅童の大名某。児太郎の姫御寮。

昼の最後は「外郎売」。

海老蔵の外郎売。お家芸歌舞伎十八番のためか力が入る。長男・堀越勸玄を貴甘坊の役で連れて出る。勸玄が外郎売の早口言葉を数分間もかわいく語る。客席は拍手喝采というより興奮のるつぼだ。

一昨年七月、前月に母を失ったばかりの勸玄が舞台に立った。その時、女性客は勸玄の母になりきり、あるいは祖母になりきっているような異様な雰囲気であった。

今月もまだその雰囲気が続いている。早口言葉を無事に言い終えることが出来るかどうか。幼いわが子、わが孫を心配するような女性客の熱気が充満していた。

梅玉の工藤。魁春の大磯の虎。獅童の小林朝比奈。雀右衛門の化粧坂少将。児太郎の小林妹舞鶴。

夜の部は「星合世十三團 成田千本桜」の通し。

タイプの異なる三立役、知盛・権太・忠信を立派に勤めることは至難の業とされる義太夫狂言「義経千本桜」を織田紘二、石川耕士、川崎哲男、藤間勘十郎が補綴・演出。海老蔵が上記三役を含む十三役を演じ分け、疾走した。

三立役のほか、若衆(小金吾)、親父(弥左衛門)、さらに女形(卿の君)など幅広い役を演じ、宙乗り、早替わり、大立ち回りであっと言わせる。海老蔵の魅力満載の舞台である。

特によかったのは知盛。さっそうとした銀平、知盛の正体を顕してからの勇者ぶり。豪快な入水から天に上る宙乗り。わくわくさせる。

その他の役では、もう少しじっくりやってもらいたいものもあるが、本作はスピードが命だから仕方あるまい。

宙乗りに早替わりというと、かつては猿翁の専売特許のようなものであったが、近年やや影を潜めている。海老蔵はその伝承をも念頭に置いているのであろう。重要な歌舞伎の要素なのだから。

こう書くと海老蔵一人芝居に思われるかもしれないが、そうではない。

ベテラン梅玉が品格のある義経、魁春の典侍の局、左團次が重々しい梶原景時で舞台に安定感を与えている。雀右衛門の静御前、萬次郎の尼妙林、右團次の相模五郎も好演である。

8日所見。

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