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2019年12月13日 (金)

国立劇場12月歌舞伎評

前半は白鸚が28年ぶりに佐々木盛綱に取り組んだ「盛綱陣屋」。徳川幕府に忖度し、時代設定を江戸時代から鎌倉時代に変えた作品である。

敵対すると言えども弟・高綱が武士道の道を外さないよう盛綱は自軍が生け捕った高綱倅小四郎の切腹を画策する。白鸚は難局や悲劇に直面する盛綱を楷書で演じ、人物の大きさを示すとともに、弟や甥に対する情愛をにじませる。それが、父。高綱の首実検で偽首と知りながら小四郎が進んで切腹する愁嘆場を大きくしている。

吉弥が盛綱に頼まれ小四郎に切腹を迫る盛綱母・微妙。三婆の一つ微妙にしては若いが、孫を死に追いやる苦悩が出て健闘。愁嘆場を盛り上げている。

その他の共演者も好演している。

魁春が小四郎の母。篝火、高麗蔵が盛綱倅小三郎の母・早瀬。

楽善が北条時政で貫禄と腹黒さ、彌十郎は和田兵衛で豪胆さと正義感を出している。

幸四郎が信楽太郎、猿弥の伊吹藤太。それぞれ、暴れの注進、道化の注進で場を盛り上げた。

そして、小四郎、小三郎の子役もよかった。

後半は映画界の喜劇王、チャールズ・チャプリン作「街の灯」を元にして昭和6年に木村錦花が歌舞伎化した「蝙蝠の安さん」。チャプリンの大ファンという幸四郎が主人公の安さんを勤める。

国立劇場文芸研究会補綴、大野裕之脚本考証。大和田文雄演出。

その日暮らしの安さんは盲目の草花売りの娘・お花と出会い、草花を買うなど助けてやるが、目が治ると助けてやった人物であることを明かさず去る…。心温まる物語だ。

幸四郎は笑いを取りながら飄々と演じ、爽やかな後味のいい舞台を作っている。

顔に蝙蝠の入れ墨のある安といえば「切られ与三」の小悪党・蝙蝠安を思い浮かべるが、そのイメージはない。

新悟のお花。可憐で若々しい声が役に合う。

友右衛門が人情味のある大家・勘兵衛で、世話物に強いところを見せた。

猿弥が酒を飲むと人格が変わる上総屋新兵衛で芸達者ぶりを示した。

9日所見。

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