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2020年1月 9日 (木)

初春大歌舞伎評

昼の部は長唄舞踊「醍醐の花見」から。関白になった秀吉の威勢を示す一幕。梅玉の秀吉で、めでたさがあり初春の幕開きにふさわしい舞台になった。魁春の北の政所、福助の淀殿、芝翫の智仁親王、勘九郎の石田三成で華やか。

続く「奥州安達原・袖萩祭文」は源義家と安倍貞任・宗任兄弟の戦いを背景にした時代物浄瑠璃。

雀右衛門の袖萩。封建時代の武家社会にあって、父親の意に反して結婚、盲目となり、貧苦にさいなまれながら幼い娘を連れて親元を訪ねてきた女の悲しみを切々と演じる。東蔵が父・直方でベテランの味。笑三郎の母・浜夕、熱演する子役の娘・お君。浄瑠璃・葵太夫、三味線・寿治郎の竹本に乗り、感動的な愁嘆場を作った。

後半は芝翫の貞任、勘九郎の宗任、七之助の義家で歯切れのよい幕切れ。

続いて大看板の2演目。

狂言舞踊「素襖落」は吉右衛門が酒を飲んで主人への伝言を忘れる太郎冠者。大名に仕える小者に徹しながらも、意地の強さを見せて上品な笑いを取る。

又五郎の大名某、雀右衛門の姫御寮、鷹之資の次郎冠者、種之介の太刀持鈍太郎。

昼の最後になるのが白鸚の「河内山」。高僧に化けて大名の魔の手から娘を救い出そうとする河内山だが、見破られるまで低い声で通す。化けの皮がはがれてからの居直りとの落差を付けている。「相なるべくは山吹の」の相なるべくを強調、金を要求する本音を分かりやすくしている。

「玄関先」での見破られての啖呵から声を大きくし、花道の「馬鹿め」で最高潮。胸のすく芝居である。前演目の吉右衛門と共に、円熟を越え枯淡の境地にさしかかっている。

歌六の高木小左衛門。芝翫の松江出雲守。錦吾の北村大膳。

夜の部は「義経腰越状・五斗三番叟」で始まる。昼の最後に引き続いて白鸚の演しもの。大事な時に好きな酒を断り切れず泥酔してしまう軍師・五斗兵衛を丁寧に描く。錦吾の錦戸太郎、男女蔵の伊達次郎が五斗兵衛を陥れる敵役で健闘。歌六の泉三郎、芝翫の源義経、猿之助の亀井六郎。

続く「連獅子」は猿之助の親獅子の精、團子の仔獅子の精。やはり毛ぶりで感動させる。

最後は三島由紀夫の喜劇「鰯売恋曳網」。勘九郎演じる鰯売・猿源氏が父親らの協力を得て、大名になりすまし高根の花の傾城・蛍火、実は大名家のお姫様と結ばれる。

勘九郎が奇妙な売り声を上げ、頼りない純情男を好演、現代っ子風に蛍火を演じる七之助と息が合う。

東蔵の猿源氏父・海老名ら脇も充実、今月一番楽しめる舞台になった。

4日、歌舞伎座所見。

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