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2020年2月 8日 (土)

歌舞伎座・二月大歌舞伎評

昼の部は十三代目片岡仁左衛門二十七回忌追善で当代が父の十三代目から継承した「菅原伝授手習鑑」の菅丞相を演じる。

幕開きは「加茂堤」。勘九郎の桜丸、孝太郎の女房八重で二人は若い斎世親王(米吉)と苅屋姫(千之助)の逢引を手助けするが、のどかな雰囲気を出している。

次の「筆法伝授」で仁左衛門が出る。丞相はせがむ希世(橘太郎)にではなく武部源蔵(梅玉)に伝授するが、源蔵の勘当は解かない。威厳のある丞相である。秀太郎の御台園生の前。

最後が「道明寺」。仁左衛門の丞相は父親譲りで神がかり。後世天神と崇められる菅原道真の品格、養女・苅屋姫への情愛で余人をもって代えがたい世界を生み出す。仁左衛門の年齢を考えると、この世界を生み出す後継者はいるのかと心配になる。

今回、この高い世界に負けないものが二つあった。一つは玉三郎の覚寿。三婆の手強さと娘への慈愛が交差し、時に丞相の世界の高さを上回る。もうひとつは葵太夫。緩急自在、情のこもった浄瑠璃が遠慮なく役者にぶつかってくる。三点指示で名舞台が成立した。

周りの芝翫の判官代輝国、孝太郎の立田の前、千之助の苅屋姫、歌六の土師兵衛、彌十郎の宿禰太郎も好演した。

夜の部は「八陣守護城」からで、これも十三代目片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言。毒酒を飲まされながらも泰然自若の佐藤正清(加藤清正のこと)の役を父十三代目から受け継いだ我當が勤める。体調十分とは思えないが、懸命に演じる姿に役者魂を感じる。それが正清の忠誠心につながる。進之介が家臣斑鳩平次。

続く「羽衣」は羽衣伝説を題材にした長唄舞踊。玉三郎が天女を幻想的に舞う。勘九郎が漁師・伯竜。

「人情噺文七元結」は菊五郎が当たり役の左官長兵衛で、舞台に江戸の市井の風を吹き込む。酒好き、博打好きだがお人よしの長兵衛。

泣かせ笑わせる菊五郎の長兵衛も仁左衛門の菅丞相同様、余人をもって代えがたく、後継者どうなってると心配になる役だ。

雀右衛門の口やかましい長兵衛女房・お兼、時蔵の角海老女房・お駒、左團次の和泉屋清兵衛、梅玉の鳶頭・伊兵衛と周りも手堅い。

今回目を引いたのは、團蔵の角海老手代・藤助。柔らかい味が出た。女形の梅枝も文七をうまくこなした。亀蔵の家主・甚八、莟玉の長兵衛娘・お久も好演した。

最後の「道行故郷の初雪」は「新口村」を素材にした清元舞踊。梅玉の忠兵衛、秀太郎の梅川、松緑の万才松太夫で哀愁漂う舞台を作った。

4日所見。

 

 

 

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